◆家づくりのコラム:造作家具について
ピッタリサイズですっきり空間!住宅の造作家具についてのお話し
家具と言えば、住まいが完成してから家具屋さんで購入するもの…と考えられるのが一般的ですが、家づくりといっしょに家具を作る「造作家具」という選択肢もあります。
造作家具は、メリットも多く、注文住宅を建てる際はぜひ検討したいものです。
今回は、造作家具とはそもそも何なのか?ということから、使われる材質と特徴、メリット・デメリット・選び方のポイントについて解説します。
造作家具とは?
造作家具とは、その家のために作られたオーダーメイドの家具のことで、「造り付け家具」とも言います。
既製品の家具は、家具店などのお店で購入して設置するのに対し、造作家具は、家づくりの途中や、家が完成した後に、その部屋に固定して造りつけることになります。
本棚などの収納家具や机、テーブルはもちろん、キッチンや洗面化粧台なども造作家具の対象になります。
造作家具の種類は、大きく2つに分けられます。
大工工事でつくるタイプと家具工事でつくるタイプです。
大工工事でつくるタイプは、大工さんが現場で加工・取り付けの全てを行います。
比較的構造が単純なカウンターや棚などが造られます。
家具工事でつくるタイプは、メラミン化粧板や人工大理石など、加工が難しい材質や、構造が複雑な引き出しなどがつくものが当てはまり、一般的に、次の手順で造作が行われます。
- 設計士や家具屋(職人)が施主の要望を聞く
- 要望をもとに間取りと合わせて設計する
- 施主と設計士や家具屋が打ち合わせを行い、理想の家具を検討する
- 家具屋の工房などで加工・制作を行う
- 家づくりの工程に応じて、適したタイミングで現場組み立て・取り付けを行う
家具工事でつくるタイプの家具は、住まいづくりと同様に、打ち合わせを行います。
理想の家具になるように、形状や納まり方、色合いなどを検討する必要があるため、スケジュールに余裕を持って検討することが大切です。
造作家具に使われる材質と特徴
造作家具に使われる、代表的な材質と特徴について解説します。
■ 無垢材
無垢材とは、木そのものを必要な寸法で切り出し、削り、製材された材料のことです。
次の特徴があります。
- 木目を活かした温かみがある
- 木材ならではの調湿効果がある
- 年数が経つにつれ、色合いや質感の変化を楽しむことができる
- 木目の質感はその木によってひとつひとつ異なるため個性的
- 高級感と重厚感がある
- 耐久性に優れる
- 比較的高価
- 重い
- 反りなど変形することがある
■ 突板
突板とは、無垢材の表面を2mmほどの厚みに薄く加工し、ベニヤ板やMDF材など「芯材」と言われる合板に貼り付けた材料です。
次の特徴があります。
- 無垢材風の仕上がりになる
- 比較的安価で無垢材の半額程度
- 軽い
- 傷つくと補修できない場合が多い
■ 集成材
木材の節や、割れた部分を取除いた無垢材同士を接着剤で組み合わせた木材のことです。
次の特徴があります。
- 無垢材に比べて価格が安い
- カウンターや面材、棚板など幅広く使われる
- 木材本来の風合いが活かせる
- 耐久性に優れる
- 変形が少ない
- つなぎ合わせた木目が表面に見えてくる
■ メラミン化粧板
メラミン樹脂などの樹脂成分を紙に浸み込ませ、高い圧力をかけて形成したプラスチックの板のことです。
次の特徴があります。
- 家具はもちろん、扉の面材、内装の仕上げ材とし使われることもある
- 質感、色柄、デザインのバリエーションが豊富
- 手入れしやすい
- 表面の強度が高い
- 傷に強い
- 商業施設や公共施設の設備などにも用いられる
- 経年でツヤなどの質感が劣化する
- 比較的高価
■ ポリ合板
ポリエステル系の樹脂を、合板の表面に圧着させたものです。
次の特徴があります。
- 家具の面材や棚板などに使われる
- デザインのバリエーションが豊富
- メラミン化粧板より安価
- メラミン化粧板より表面の強度は劣る
■ オレフィンシート
木目やパターン、石目などの色柄が印刷されたビニルシートで、次の特徴があります。
- 面材や扉などに使用される
- 傷・汚れ・紫外線に強い
- クロス(壁紙)を張るように施工される
- 価格はメラミン化粧板と同等か、それ以上
■ 人工大理石
樹脂を主成分として、人工的に造られた大理石に似せられた素材のことで、次の特徴があります。
- カウンター材として人気を集めている
- 高級感がある
- 石目調や大理石調、単色、ラメが入ったものなど幅広い色柄からデザインを選べる
- 耐水性、耐薬品性、耐久性に優れる
- 水廻りに最適
- 重い
- 経年劣化で変色する
キッチンの天板でおなじみの人工大理石、水回りには最適です♪
造作家具のメリットとは?
オーダーメイドで制作を依頼する造作家具には、次のメリットがあります。
- 寸法や材質もちろん、使用する金物など、細部まで自分の好みにできる
- 部屋にぴったり納められるため、デッドスペースができない
- 住まいづくりと並行して作られるため、空間と調和しやすい
- 地震で家具が転倒する恐れがない
- 家具を購入しなくてよくなる
造作家具は、住まいと施主のお好みにトコトン合わせてつくることができます。
費用こそ掛かりますが、こだわった分、愛着がわき、長く使いやすい家具になることは間違いありません。
また、大きな地震があった際、住宅内では家具の転倒によりケガを負うことや、最悪の場合命を落とすこともあります。
そういった安全性も造作家具の大きなメリットです。
造作家具のデメリットとは?
デメリットとしては、次のことが挙げられます。
- 既製品のように簡単に取替えができない
- 既製品に比べて費用がかかる
- 既製品の家具が完成品を見て購入するのに対し、造作は確認することができない
- こだわりすぎて使い勝手が悪くなることがある
造作家具は、住まいと一体化して作られるため、基本的に移動することができません。(移動できるよう工夫することもできます)
模様替えが好きな人や、家具を買い替えたい人には向きません。
壁一面を収納にする事も可能です!
造作家具の計画のポイント
造作家具は、たいていの場合、家が解体されるまで使われる「一生もの」になります。
家具をオーダーする際に、後悔しないよう、知っておきたいポイントを解説します。
1.使い方を明確にする
造作家具は、誰が、どのような時に、どのような用途で使うか明確にして、それに合わせて計画することが大切です。
例えば、収納家具でも、コレクションが見えるように収納したいのか、傷まないように収納したいのかでは、家具の作り方は変わってきます。
玄関にベンチを作る場合、元気な成人男性と、小柄で足腰が弱っているお年寄りでは、使いやすい高さや座面の深さは異なります。
既製品のように、全ての人に使いやすい計画にするよりも、使う人の身長やほしい機能を充実させた方が、満足感の高い仕上がりになります。
2.メンテナンスできるようにする
造作家具は、既製品のように、不具合が起きた場合、簡単に買い替えたり、取り替えたりすることができません。
建て主自信や手掛けた家具職人がメンテナンスをすることになります。
複雑な構造にすると、その分メンテナンスがしにくくなり、メンテナンス費用や手間が掛かることになり、最悪の場合、修理できない場合も考えられます。
長く愛着を持って使い続けられるように、メンテナンスにも配慮した計画を心がけましょう。
3.デザインや色合いに気を付ける
既製品のように買い替えることが難しい造作家具は、長年飽きずに使えるデザインと色合いにすることが大切です。
内装の色味に合わせた方が、飽きにくく、模様替えにも馴染みやすくなります。
4.予算を確保する
造作家具は、既製品の家具の2倍以上の費用が掛かる場合も多く、予算が確保できず、断念してしまうケースもあります。
予算制限が厳しくても、造作家具を作りたいときもありますよね。
その場合、間取りを検討する時点など、なるべく早く家具に掛かる費用を明確にし、予算を確保しましょう。
どうしても予算が確保できない場合、費用を抑えて作れる「セミオーダー」の家具もあります。
家具メーカーや建材メーカーの商品で、設計の自由度や選べる選択肢は狭まりますが、大きなこだわりがない場合、満足できる仕上がりが期待できます。
全体のイメージに合わせて計画する事で統一感のある空間を実現できます!
造作家具とはそもそも何なのか?ということから、造作家具の素材、メリットとデメリット、計画のポイントについて解説しました。
造作家具、計画の手間や費用が掛かる分、愛着がわきやすいものです。
長く使えるように、メンテナンスにも配慮して、一生ものの家具づくりができるといいですね。
◆ 執筆者プロフィール ◆

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。
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