◆家づくりのコラム:防火指定地域について
土地選びの際に、「防火地域」という言葉を聞くことがあるかもしれません。
注文住宅を建てる際は、防火地域とは一体どのようなものなのか知っておく必要があります。
理解せずに土地選びをすると、要望が叶えられないことや、思わぬ予算オーバーになってしまうことも…!
今回は、防火指定地域とはそもそも何なのか?ということから、調べ方と選び方のポイントを解説します。
防火指定とは?
防火指定とは、都市計画法にもとづいて定められた地域のことです。
建物が密集しやすい繁華街や駅前などの地域は、一軒火災が起こるとみるみる広まってしまう恐れがあります。
防火指定は、火災の危険を最小限にとどめるために、建物の燃えにくさについて制限を定めています。
東京都の場合の厳しさは以下の順になります。
防火地域>新たな防火規制区域>準防火地域>法22条区域>無指定
全国の場合の厳しさは以下の順になります。
防火地域>準防火地域>法22条区域>無指定
防火指定の中でも、「防火地域」は一番厳しい制限で、一番燃えにくい建物をつくる必要がある地域です。
東京都の場合、防火地域に次いで厳しい制限の地域として、「新たな防火規制区域」と呼ばれる地域があります。
全国的には、「防火地域」の次に厳しいのは「準防火地域」となります。
さらに、人口25万人以上の市に「法22条区域」という特定行政庁が指定する地域があります。
何も指定がない地域は、最も制限が緩く、「無指定」と呼ばれる地域です。
それぞれの区域について、順番に詳しく解説します。
防火地域とは?
防火地域とは、防火指定の中で最も制限の厳しい地域です。
いわゆる一般的な木造住宅は建てることができません。
防火地域は、一般的に駅の周辺や役所などの都市機能が集中している中心的な市街地や、繁華街や幹線道路に沿って作られた商業地域などが指定されます。
防火地域の具体的な制限は、次のようになっています。
- 建てようとする建築物は、最低限準耐火建築物としなくてはいけない
- 平屋建ての付属建築物で、延べ面積50㎡以下のものは準耐火建築物としなくてOKではあるが、外壁と軒裏を防火構造として、屋根を不燃材料でふき、開口部は防火設備とする必要がある
- 門、塀は準耐火建築物としなくてOK
- 3階建以上の建築物は、耐火建築物とする(地階も含む)
- 延面積が100m2を超える建築物は、耐火建築物とする
(耐火建築物とは、鉄筋コンクリート造や鉄骨造、国土交通大臣の認定を受けた特殊な木造住宅のことを言います。)
新たな防火規制区域とは?(東京都)
新防火地域とも呼ばれ、東京都における木造密集地域で、災害時の安全性を確保するために2003年に定められました。
地震による建物の倒壊危険度や、火災危険度が高い地域や、老朽木造住宅の多い地域、木造住宅の密集した地域などが対象になります。
新たな防火規制区域の具体的な制限は、次のようになっています。
- 延床面積が50m2以下の平屋の付属建築物は準耐火建築物としなくてOK
- 500m2以下で1~3階建ては準耐火建築物とする
- 500m2を超える建築物は全て耐火構造とする
- 4階建て以上の建物は全て耐火建築物とする
準防火地域とは?
準防火地域とは、防火地域よりも制限が緩いですが、ある程度の制限がありますので、建築物を建てる際には注意が必要な地域です。
準防火地域は、一般的に防火地域の外側を囲うように設定されています。
準防火地域の具体的な制限は、以下のようになっています。
必ず耐火建築物としなくてはならない場合
- 地上4階建て以上の建築物
- 地上3階建てで延べ面積が1500㎡を超える建築物
- 地上1階または地上2階建てで延べ面積が1,500㎡を超える建築物
最低限準耐火建築物とする場合
- 地上3階建てで延べ面積が500㎡を超え、1,500㎡以下の建築物
- 地上1階または地上2階建てで延べ面積が500㎡を超え、1,500㎡以下の建築物
その他の場合
- 地上3階建てで、延べ面積が500㎡以下の場合は最低限3階建ての建築物の技術的基準に適合させる
延べ面積が50㎡以下の場合、特に制限はありませんが、更に以下の点に注意する必要があります。
- 延べ面積が50㎡以下でも、木造の場合は外壁と軒裏を防火構造とする
- 耐火構造や準耐火構造以外の建築物は、その屋根は不燃材料で造るか、不燃材料でふく
- 耐火構造や準耐火構造以外の建築物は、玄関や窓で延焼のおそれのある部分を防火設備とする
法22条区域とは?
法22条区域とは、準防火地域よりも制限が緩い区域で、一般的に防火地域や準防火地域のさらに外側が指定されています。
制限は緩いものの、やはり火災を防ぎ、周囲に広げない構造が求められます。
法22条区域の具体的な制限は以下のようになっています。
- 屋根を不燃材で葺く
- 延焼のおそれがある部分の外壁を不燃仕様にする
無指定とは?
とくに防火指定が定められていない地域で、法22条地域のさらに外側が指定されます。
人里離れた山奥や、畑が広がる地域の真ん中など、近隣と距離が離れている土地などがあてはまります。
防火指定地域の調べ方
建築計画を進める際は、購入しようとする土地や、今住んでいる土地の防火指定が何なのか知る必要があります。
厳しい区域の場合、その厳しい制限をクリアするために、防火設備を導入するなどして、建材選びに気をつかう必要があります。
同じ間取りの建物でも、使いたい建材が使えないことや、指定の緩い区域に比べて建築費用が高くなることに注意しなくてはなりませんので、必ず調べましょう。
防火指定は、各自治体の都市計画図で調べることができます。
インターネットで自治体名の都市計画図を検索するか、
以下の定期報告netというページから該当区域を選択して閲覧する方法があります。
https://www.teikihoukoku.net/toshikeikaku-search/#13
東京都の場合、以下の東京都都市整備局というページから閲覧することができます。
https://www2.wagmap.jp/tokyo_tokeizu/Portal
防火指定の注意点と選び方のポイント
防火指定の厳しさに応じて、建物の仕様は変わってきます。
理想の建物をつくるために、知っておきたい注意点と、選び方のポイントをお伝えします。
制限が厳しいほど予算が必要に!
耐火建築物にする必要がある場合、一般的な木造住宅に比べ、建築費用が跳ね上がります。
また、防火指定が厳しい地域では、床面積や階数が増えるほど制限が厳しくなります。
さらに、耐火建築物や準耐火建築物に必要とされる「防火窓」などの建材は、一般的な建材に比べて高価なため、こちらも注意が必要です。
事前に防火指定を知り、どのような建物が建てられる地域なのか確認しましょう。
大幅な予算オーバーを防ぐことができます。
開口部こだわり派は注意!
火地域や新たな防火規制区域や準防火地域の場合、使用できる建材は限られたものになります。例えば、窓や玄関扉は防火窓・防火扉と呼ばれる仕様のもので、サイズや開き方やデザインに制限があります。
ひろびろとした大きな開口窓や、味わいのある無垢材の玄関扉などは、防火設備にならない場合が多いです。
開口部にこだわりがある場合、その要望を実現できる土地なのか、事前に確認しましょう。
建築費用をなるべく抑えたい方や、広々とした開口部を求める方、木材を全面に活かした住宅を建てたい方は、防火指定が厳しくない地域を選ぶことをおすすめします。
防火指定地域について、どのようなものなのか?ということから、調べ方と選ぶ際のポイントや注意点についてお伝えしました。
理想の建物をつくるためには、土地を購入する際の事前調査が欠かせません。
建ぺい率や容積率とあわせて、防火指定区域についても必ず確認しましょう。
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◆ 執筆者プロフィール ◆

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。