◆家づくりのコラム:省エネ住宅について
「省エネ等級」「ZEH」「ゼロエミッション住宅」「スマートハウス」をご存知でしょうか?
どれも省エネ住宅のことです。
最近の家づくりでは、持続可能な社会を実現するために、住宅にも省エネ性能が求められるようになりました。
家づくりの際に、どの程度省エネの住まいを作るべきか悩んでしまう人も多いと思います。
今回は、省エネ住宅とはそもそも何なのか?ということから、必要な設備、計画や選び方ののポイントを解説します。
省エネ住宅とは?
省エネ住宅とは、暮らしを営む上で、消費するエネルギーを抑えたり、作り出したりする構造や設備を備えた住宅のことです。
省エネ性の基準となるのが、「省エネルギー基準」という、国が設けた基準です。
改定が重ねられ、現在は「外皮性能」と「一次エネルギー消費」というふたつの指標で住宅の省エネ性を評価しています。
外皮性能とは?
建物の壁・床・天井・窓などの、省エネ性能のことです。
夏の暑さや、冬の寒さに左右されず、室内の環境を快適に保つ能力が高いほど、外皮性能に優れた住宅ということになります。
外皮性能は、「断熱性」と、「日射取得量」から評価します。
断熱性は、外壁・屋根・窓・床を通して、建物から逃げる熱の量を計算し、「UA値(外皮平均熱還流率)」を使って表します。
日射取得量の計算は、夏の日差しによる室内の温度上昇を抑えることを目的とし、「ηA値(冷暖房機の平均日射熱取得率)」を使って表します。
それぞれ数字が小さいほど、省エネ性に優れているということになります。
一次エネルギー消費とは?
住まいの設備(照明・給湯・冷暖房・換気・ガス)全てのエネルギー消費量を合計して算出します。
全ての消費エネルギーは、それぞれ単位が異なりますので、「一次エネルギー消費量」という単位に統一し、「基準一次エネルギー消費量」と比較してどの程度削減できているか評価します。
省エネ住宅の種類は主に4種類
省エネ住宅と呼ばれる住まいは、主に4つの種類に分けられます。
ZEH(ゼッチ)住宅・ゼロエミッション住宅・スマートハウス・LCCM住宅のそれぞれの概念について解説します。
■ ZEH(ゼッチ)住宅
ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、使うエネルギーと作るエネルギーの収支をゼロ以下にすることを目的とした住宅です。
100%を達成したものを「ZEH」とするのに対し、75%達成したものを「Nearly ZEH(ニアリー・ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」と言います。
住まいの計画をする際は、高断熱・高性能設備・創るエネルギー設備(太陽光発電など)を備えることが必要とされます。
国内では、2030年までに新築住宅の過半数をZEH化を目標としているため、国からの補助金制度も充実しています。(2022年4月現在)
■ ゼロエミッション住宅
住宅の消費エネルギーを減らすことで、環境負荷を軽減することを目的とした住宅です。
ZEH住宅に似ていますが、ZEHの目的が、「住宅のエネルギー収支ゼロ」なのに対し、ゼロエミッション住宅には、厳密な定義はありません。
ゼロエミッション住宅は、住宅を作り、住むという過程において、住宅の消費エネルギー削減に加えて、施工方法の工夫や、産業廃棄物の削減なども含めた環境負荷の軽減を目的としています。
ちなみに、東京都が独自で定める「東京ゼロエミ住宅」というものもあります。
狭小地が多く、太陽光発電設備の設置が難しい東京都内において、太陽光発電設備を除いた上で一次エネルギー消費量を30%削減するという、全国版よりも厳しい基準になっています。
■ スマートハウス
「HEMS(ヘムズ)(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」を使って、住宅設備や家電を管理して、常に最適な運転ができるようにコントロールし、エネルギーの無駄遣いを減らすことを目的とした住宅です。
エネルギーをどのくらい使って、どのくらい作ったかが見える化されるため、住む人の節電意識も向上します。
必要な設備は、太陽光発電システム・蓄電池・HEMSに対応している住宅設備・家電・冷暖房です。
国内では、2030年までに全世帯にHEMSの普及を目標としています。
■ LCCM(エルシーシーエム)住宅
LCCMとは、「ライフ・サイクル・カーボン・マイナス」の略で、建物の一生を通して、CO2の発生量収支をマイナスにすることを目的にした住宅のことです。
建物の一生とは、建物をつくる・住む・解体するまでを意味し、その間で消費エネルギーの削減や、太陽光発電などのエネルギーを作る取り組みをすることで、ZEHやゼロエミッション住宅よりもさらに環境に配慮した低炭素住宅と言えます。
省エネ住宅に必要なこと
省エネ住宅を作るために、必要な計画や設備について解説します。
■ 壁・床・天井・開口部の断熱
外壁、屋根、床部分の断熱材に、高性能のものを使うことで、夏や冬でも外の暑さ・寒さの影響を受けにくく、冷暖房の稼働を減らすことができます。
さらに、窓や玄関扉などの開口部を断熱仕様にすることも大切です。
古い建物では、冬、窓まわりがひんやり感じることや、夏の日差しで窓や玄関扉が熱くなってしまっていることがありますよね。
窓の断熱化には、窓ガラスをペアガラスやトリプルガラス(複層ガラス)、二重窓にする、樹脂製の窓枠にするなどの方法があります。
■ 住宅設備
エネルギーを効率よく使える住宅設備を導入します。
暖房・冷房・換気設備・照明設備・給湯設備について、一次エネルギー消費量が、基準値
より小さくなるように器具選びを行うことが大切です。
■ エネルギーを作る設備(創エネ設備)
人が暮らすためには、どうしてもエネルギーが必要になるため、自分たちが使う分のエネルギーを創る設備を導入する必要があります。
太陽光発電システム、太陽熱温水器、燃料電池、蓄電池などのエネルギーを創り、貯めておける設備を整えることで、使ったエネルギーと作ったエネルギーの収支がゼロ以下になることを目指します。
■ 環境に配慮した材料選び
建物に使われる材料を環境配慮材にすることも大切です。
環境配慮材の条件は、製造時のエネルギーが少ない・寿命が長い・再利用の際もエネルギーが少なく済む・自然に分解することです。
運搬時のエネルギーが少なく済む国内産の木材や、紙や木などの自然物を原料とした断熱材や内装材、漆喰などが挙げられます。
■ 省エネ設備と自然エネルギーを最大に活用できる設計
省エネ住宅を効率的に運営するためには、設置する設備をさらに効率的に使うための住宅設計が必要になります。
設計上でできる工夫として、次のことあります。
- 太陽光発電システムに効率よく太陽光を当てるために、屋根の形状や方角を工夫する
- 日射を避けるために、軒を出す、窓上に庇を計画する
- 空調が効率よく室内に行き届くことや、エアコンをつけなくても窓を開けるだけで快適な空間が作れるように、風の流れを計画する
- 外装の経年劣化を減らすために、軒を出す
- 屋根材は断熱性の高い瓦や遮熱塗料を使う
省エネ設備に依存せず、住まいの設計計画によって省エネ性能をアップさせることも大切です。
省エネ住宅の選び方とポイント
省エネ住宅を建てる際に、知っておきたいポイントを確認しましょう。
① 予算に合った計画にしよう
省エネ住宅の性能は、高いほど便利で暮らしやすく、環境に優しいものになります。
ただし、省エネ性能を優れたものにするほど、伴って費用も高額になりますので、予算に応じた計画をすることが大切です。
② 省エネ意識の高さはどのくらい?
自身の省エネ意識の高さに注目しましょう。
多少建築費用が高くなっても、内装材などのグレードを下げても、省エネに貢献したいという高い省エネ意識を持っている場合は、優先的に省エネ設備を導入することで、満足できる出来になるでしょう。
③ 無理なく維持管理できる計画にしよう
省エネ設備は、定期的な点検などのメンテナンスも必要になります。
将来的にそのような手間が掛けられるかも検討し、手間が掛けられない場合は、メンテナンスがなるべく少なく済む設備導入を検討して、無理なく快適に住み続けられるようにしましょう。
省エネ住宅とは、そもそも何なのか?ということから、必要な設備、計画や選び方のポイントを解説しました。
省エネ住宅は、環境に優しいだけでなく、住む人の健康にもいい住宅とされています。
代表例として、断熱性を高めるだけで、室内の寒暖差を抑えられますので、ヒートショックなどの体調不良が起きにくくなることが挙げられます。
これからの時代は、住まいの省エネ性も意識した家づくりをしたいですね。
◆ 執筆者プロフィール ◆

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。
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- 作成者: k-juken
- カテゴリー: 家づくりのコラム, 省エネ住宅
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