◆家づくりのコラム:耐震・制振・免震構造について
地震大国と言われる日本では、毎年各地で大きな地震が発生し、多くの人や建物が大変な被害にあっています。
常に地震のリスクを背負うこの国で、安全に暮らすために欠かせないのが、建物の地震対策です。
家づくりの際、どの様な方法で行うべきか、悩んでしまう人は多いのではないでしょうか。
新築で行われる地震対策として、代表的なのが「耐震構造」「制震構造」「免震構造」3つです。
今回は、3つの構造(工法)の特徴と違い、選び方のポイントについてお伝えします。
地震対策!3つの構造の特徴
「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の特徴について解説します。
耐震構造の特徴
建物を強く作ることで、地震の揺れに耐える構造で、国内で最も普及しています。
国内の住宅の「標準装備」と言えます。
仕組み…筋かいや構造用合板や金物などで壁や床を堅く補強することで地震の揺れに抵抗する
目的…建物が倒壊せずに住民が避難できること
耐震等級1 震度6強から7の住宅で倒壊もしくは損傷しない
耐震等級2 耐震等級1の1.25倍の強度がある建物(公共建築物の最低ライン)
耐震等級3 耐震等級1の1.5倍の強度がある建物(災害復興拠点の基準ライン)
メリット
- 比較的コストが掛からない
- 工期が長くならない
- 狭小地でもできる
- リフォームでも対応できる
- 取り扱いが多い
デメリット
- ほかの2つの構造に比べて最も揺れを強く感じる
- 主要構造部に損傷を生じる場合がある
- 大きな地震の後全面的に損傷を調査する必要がある
- 一度の揺れは耐えるものの、繰り返しの揺れに弱い
- 復旧が不可能になることもある
金物と筋交いで建物を支えています!
▼金物で耐震強度を高めるSE構法について説明しています!
◆SE構法について
制振構造とは?
地震の揺れを制御する部材(ダンパー)によって吸収する構造です。
仕組み…建物に設置されたダンパーが自身のエネルギーを吸収する
目的…地震による建物の揺れを軽減する
メリット
- リフォームでも対応できる
- 工期が長くならない
- 高い建物ほど効果的
- 免震構造よりは安い
- 主要構造部の損傷を防ぐ効果が期待できる
- ダンパーは繰り返し使用できるため、繰り返しの地震も安心
- 台風によるダメージを受けにくい
デメリット
- 耐震構造よりはコストがかかる
- ダンパーの設置スペースが必要なため設計の自由度は制限される
- 地震後損傷の状況は調査する必要がある
特殊なダンパーによって揺れを吸収しています!
免震構造とは?
免震装置によって、地震の水平の揺れを建物に伝えない構造です。
仕組み…建物と基礎の間に「免震層」と呼ばれる免新装置を設置する層を設ける
目的…「免震層」より上部の建物の揺れを1/3程度まで軽減させる
メリット
- 3つの工法の中で最も地震の揺れを回避できる
- 繰り返しの揺れに強い
- 設計の自由度は高い
デメリット
- 最もコストが掛かる
- 最も工期が必要
- 維持管理費が必要
- 揺れを吸収するスペースが必要になるため、敷地に余裕が
- 取り扱っている業者が少ない
免振装置で建物内部の揺れを軽減しています!
住まいの地震対策選び方!4つのポイント
住まいに合った地震対策をするために、検討したい4つのポイントを解説します。
1.コストで選ぶ
地震対策に十分コストを掛けて、徹底して安心した住まいを作りたい場合、地震対策として最上位の「免震構造」がおすすめです。
しかし、家づくりでは地震対策にそこまで費用を掛けられない方が多いのも事実です。
建築基準法で定められている建物の強さは、震度6から7程度の地震で倒壊や損傷せず、安全に避難できることが基準になっています、
この基準は耐震等級1を満たすものです。
1981年6月1日以降に建つ住宅は、何も言わなくてもこの仕様になっていますので、「それで満足」と思われる場合は、そこまでお金を掛けず、「耐震構造」の「耐震等級1」の対策が適しているでしょう。
繰り返しの地震に抵抗する力や、損傷を小さくしたい場合は、耐震等級を2以上にすることや、制震構造の導入など、予算に応じた方法を検討しましょう。
2.環境で選ぶ
地震対策の方法は、土地の環境も検討する必要があります。
狭小地では、敷地内にスペースが必要になる免震構造は選びにくくなります。
比較的設計の自由度が高い耐震構造がおすすめと言えます。
地震以外にも、日ごろから風が強い地域や、台風が心配な地域の場合、耐風力に期待できる制震構造や耐震構造がおすすめです。
3.将来性や優遇も考慮する
耐震等級2以上の住まいや、制震構造、免震構造の住まいは、安心感があるため、建物の価値が下がりにくく、築年数が経過しても売りやすい特徴があります。
また、免震構造を筆頭として、地震対策に優れるほど地震保険が安くなる、自治体によって補助金がもらえるなどのメリットもあります。
4.構造計算で安心の住まいをつくる
木造2階建てかつ500平米以下の住宅は、構造計算の義務付けがありません。
そのため、国内のほとんどの木造住宅の強さは、壁の量・耐力壁の配置バランス・床の強さを確認する「壁量計算」という方法で確認されています。
計算内容はA3の用紙1枚程度で証明されます。
対して、構造計算を行った場合、これに加えて柱強度・部材の接合強度・地盤と基礎の強さを加えた建物の強さを確認することができます。
計算内容は、A3の用紙100枚以上になりますので、より精度の高い計算であることがわかります。
複雑な話ですが、構造計算を行わない耐震等級2の建物よりも、構造計算を行った耐震等級1の建物の方が強度に優れるという計算結果もあります。
構造計算には別途費用が掛かりますが、構造計算を行うことで、住まいの地震対策についての安心感は増すことは間違いありません。
日本で暮らすということは、常に大きな地震のリスクを背負っていることになります。
アレコレこだわりたくなる注文住宅ですが、建物の構造にもこだわって安心して長く安全に暮らせる住まいづくりができるといいですね。
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◆ 執筆者プロフィール ◆

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。