◆家づくりのコラム:防火地域について
日本では、万が一建物が火事になってしまった際に、周囲の建物に延焼しないように建物には一定の耐火性能が求められています。
その厳しさは4段階に分かれていて、都市計画法に基いて、各自治体が定めています。
防火指定と言って、厳しい順から「防火地域」「準防火地域」「法22条区域」「無指定」となっています。
今回は、そんな「防火地域」「準防火地域」「法22条区域」の具体的な制限の内容と、防火指定区域の調べ方についてお伝えします。
防火地域とは?
防火地域とは、防火指定の中で最も制限の厳しい地域です。
いわゆる一般的な木造住宅は建てることができません。
防火地域は、一般的に駅の周辺や役所などの都市機能が集中している中心的な市街地や、繁華街や幹線道路に沿って作られた商業地域などが指定されます。
防火地域の具体的な制限は、以下のようになっています。
- 建てようとする建築物は、最低限準耐火建築物としなくてはいけない
平屋建ての付属建築物で、延べ面積50㎡以下のものは準耐火建築物としなくてOKです。しかし、外壁と軒裏を防火構造として、屋根を不燃材料でふき、開口部は防火設備とする必要があります。
門、塀も準耐火建築物としなくてOKです。
- 3階建以上の建築物は、耐火建築物とする(地階も含む)
- 延面積が100m2を超える建築物は、耐火建築物とする
耐火建築物とは、鉄筋コンクリート造や鉄骨造、国土交通大臣の認定を受けた特殊な木造住宅(木造耐火建築)のことを言います。
防火地域での木造住宅を可能にする木造耐火建築
準防火地域とは?
準防火地域とは、防火地域よりも制限が緩いですが、ある程度の制限がありますので、建築物を建てる際には注意が必要な地域です。
準防火地域は、一般的に防火地域の外側を囲うように設定されています。
準防火地域の具体的な制限は、以下のようになっています。
必ず耐火建築物としなくてはならない場合
- 地上4階建て以上の建築物
- 地上3階建てで延べ面積が1500㎡を超える建築物
- 地上1階または地上2階建てで延べ面積が1,500㎡を超える建築物
最低限準耐火建築物とする場合
- 地上3階建てで延べ面積が500㎡を超え、1,500㎡以下の建築物
- 地上1階または地上2階建てで延べ面積が500㎡を超え、1,500㎡以下の建築物
その他の場合
- 地上3階建てで、延べ面積が500㎡以下の場合は最低限3階建ての建築物の技術的基準に適合させる
延べ面積が50㎡以下の場合、特に制限はありませんが、更に以下の点に注意する必要があります。
- 延べ面積が50㎡以下でも、木造の場合は外壁と軒裏を防火構造とする
- 耐火構造や準耐火構造以外の建築物は、その屋根は不燃材料で造るか、不燃材料でふく
- 耐火構造や準耐火構造以外の建築物は、玄関や窓で延焼のおそれのある部分を防火設備とする
法22条区域とは?
法22条区域とは、準防火地域よりも制限が緩い区域で、一般的に防火地域や準防火地域の外側が指定されています。
制限は緩いものの、やはり火災を防ぎ、周囲に広げない構造が求められます。
法22条区域の具体的な制限は以下のようになっています。
- 屋根を不燃材で葺く
- 延焼のおそれがある部分の外壁を不燃仕様にする
一般的に使われるメーカー品の屋根材や外壁材は、防火認定を取得しています。
なので、一般的なメーカー品を選択すればほぼ問題は起こりません。
意匠にこだわって自然の材料を使いたい場合など、メーカー品を使わない場合は防火性についてよく検討した上で使用しましょう。
防火地域の調べ方
防火指定が厳しい区域の場合、その厳しい制限をクリアするために、同じ間取りの建物でも、指定の緩い区域に比べて建築費用が高くなることに注意しなくてはなりません。
防火指定は、各自治体の都市計画図で調べることができます。
インターネットで自治体名の都市計画図を検索するか、
以下の定期報告netというページから該当区域を選択して閲覧する方法があります。
▶ https://www.teikihoukoku.net/toshikeikaku-search/#13
東京都の場合、以下の東京都都市整備局というページから閲覧することができます。
▶ https://www2.wagamachi-guide.com/tokyo_tokeizu/
土地を購入する前には、その地域の防火指定についてもぜひ確認してください。
地域によって建設コストが大幅に変わってきますので土地の選定は慎重に!
防火地域の意味と、防火地域の調べ方についてお伝えしました。
予算が厳しい場合や、大きな窓をつけたい場合、木造住宅に住みたい場合は防火指定に特に注意してその地域の防火指定をチェックする必要があります。
建物の耐火性能は高い方が安心ですが、予算や要望と合わせて検討できるといいですね。
◆ 執筆者プロフィール ◆

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。