◆家づくりのコラム:枠について
建具の枠についてのお話し
住まいの窓や、ドアの廻りに設置される「枠」は、設置方法や、色など、こだわれるポイントがたくさんあります。
枠について深く考えずに計画すると、ドアとセットで考えたり、なんとなく床材の色と合わせたり、計画することになってしまうことも。
今回は、枠の役割から、名称、材質の特徴、選び方のポイントについて解説します。
枠の役割とは?
枠には、ダメージを受けやすい開口部まわりを保護する役割があります。
紫外線や、内部と外部の温度差(結露)、開口部を開け閉めする際の振動で、日々ダメージを受ける部分です。
耐久性のある部材を設置することで、長く美観を保ち、建物が傷むのを防ぐことができます。
そのほかにも、開口部周りを装飾し、インテリアを演出する役割があります。
設置方法や色、枠の太さ、デザインによって、枠の存在を強調することも、消すこともできるため、住宅のコンセプトや内装のイメージに合わせて計画しましょう。
枠の名称
窓の周りに用いる枠は、「窓枠」や「額縁」と呼ばれます。
さらによく使われる言葉として、枠を取り付けた際に、正面から見える幅を「見付(みつけ)」、枠の奥行きを「見込み(みこみ)」と呼びます。
打ち合わせの際に、「見付けの寸法は~」などという話題が出てくるかもしれません。
枠の材質と特徴
住宅で用いられる建具の枠に用いられる材質と、特徴について解説します。
■ 木材
無垢の木材を加工して枠材にする方法です。
枠の表面に彫刻を施すことや、塗装で様々な色にすることが可能です。
高級感と存在感があり、樹種は耐水性に優れるヒバやツガが一般的です。
■ 木質材
建具メーカーなどの既製品の場合一般的な材質です。
MDF(木材チップを樹脂で固めたもの)などの繊維板に化粧シートを巻きつけるようにして作られています。
比較的耐久性に劣りますが、安価で見栄えがいいこと、施工性がいいことが特徴です。
耐水性に優れますが、浸水すると膨らんでぼろぼろになってしまい、回復できなくなるため、注意が必要です。
■ 樹脂製
樹脂を枠材の形状に加工して作られた枠材です。
木材や木質材の耐水性の弱さを克服していて、公共施設や店舗で多く使われています。
住宅では、浴室の扉や浴室の窓に使われることが多く、居室ではコーディネートに気を付けないと違和感があるかもしれません。
カラーバリエーションが少なく、単色の白が一般的です。
枠の納め方と特徴
建具周りに用いる枠の納め方(取り付ける方法)は、四方枠、三方枠、二方枠、前板納めがあります。それぞれの特徴を確認しましょう。
■ 四方枠
開口部の周りの上下左右4方向に枠を廻して納める方法です。
結露や、開閉時の擦れ、振動などダメージを受けやすい建具周りを十分に保護できます。
飾りを施すことで、建具周りに重厚感を演出することもできます。
■ 三方枠
四方枠に対して、開口部の上部・左右の3方向に枠を施す方法で、掃き出し窓や、段差なく出入りを行いたい部分に用いられます。
■ 二方枠
開口部の左右のみ、2方向に枠を施す方法で、開口部上部に下がり壁がなく、下部に段差がない場合に用いられます。
四方枠や三方枠に比べて低価格で、すっきりとした雰囲気になります。
■ 前板納め
開口部の下部に下枠のみを設け、上部・左右の3方向はクロスや内装材を巻き込んで仕上げる方法です。
枠を廻していない3方向については、擦れや耐水性に劣るため、十分な配慮が必要になりますが、とてもすっきりとした見た目になり、枠なしに次いでローコストで作ることができます。
枠の選び方のポイント
いろいろな選択肢から、枠を選ぶために知っておきたい3つのポイントを解説します。
1.存在感を消す?目立たせる?
枠の存在は、空間の雰囲気に大きく影響します。
太い枠材は、室内の雰囲気を温かで安定感のあるものにします。
ただし、存在が目立つ分、色のコーディネートに合わせなければ「暑苦しい」「重い」「うるさい」と感じるかもしれません。充分に注意が必要です。
できる限り細い枠材にしたり、枠を取り付けなかったり、枠の色を壁と同化したりすることで、枠の存在感を消すこともできます。
枠の存在感を消すことで、空間はモダンで、すっきりとした印象になるでしょう。
空間のイメージをどのようなものにしたいか、理想の部屋の写真などを集め、設計者と共有するのもおすすめです。
2.色選びのポイント
枠の色を選ぶ際も、枠の存在を消したいか、目立たせたいか?を検討しましょう。
消したい場合、壁の色と同化させるといいでしょう。
目立たせる場合、床の色やほかの建具の色と合わせるのが無難です。
もくは、アクセントカラーで全く違う色を選んでもおしゃれな印象になります。
枠の色味は、後々の家具選びにも影響します。
好みのインテリアにできるように、購入したい家具に目星をつけて、同系色で合わせてもいいですね。
3.前板納めや枠なしの場合はリスクを理解して
開口部の下部分のみ枠を取り付ける「前板納め」や、枠なしの場合、窓まわりの場合、結露で汚れることや、内装材が傷みやすいこと、開閉のダメージを受けやすいことを十分に理解して採用しましょう。
まめな掃除などのメンテナンスや、窓やドアを断熱性の高いものにすることなどで、ある程度美観は保ちやすくなります。
無理なく理想のイメージに近づけられるといいですね。
枠によってイメージや機能面が大きく変わるので慎重に検討したいですね!
住宅の窓やドアなどの開口部の周りに用いられる、枠の役割や、材質の特徴、選び方のポイントについてお伝えしました。
枠は、空間の印象に大きく影響し、家の美観を保つ役割もありますので、予算やお好みに合った枠選びを行いましょう。
◆ 執筆者プロフィール ◆

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。
関連記事
◆家づくりのコラム:窓について (ガラス編)
家の外観の印象や、室内の快適さを左右する窓ですが、その窓に組み込まれているガラスにも様々な種類や機能があることはご存知でしょうか? 省エネや防犯、防音機能など、光を通すだけではなく、住まいの快適さに直結する […]
◆家づくりのコラム:カウンターについて
近年の住宅では、リビングやダイニングに向かってキッチンを配置する対面キッチンが人気を集めています。 対面キッチンの場合、キッチンとリビング・ダイニングを腰壁で間仕切り、天板にカウンターを設置することが多いです。 住宅でカ […]