◆家づくりのコラム:断熱材について
- 作成者: 佐藤結伽
- カテゴリー: 家づくりのコラム
- タグ: インシュレーションボード, グラスウール, セルロースファイバー, ビーズ状ポリスチレンフォーム, フェノールフォーム, ロックウール, 断熱材, 現場発泡式ウレタンフォーム, 発砲プラスティック, 硬質ウレタンフォーム, 繊維系
断熱材は、住まいの環境を快適にし、省エネ性能を向上させるために重要な部材です。
いろいろな種類がありますので、どれを選んだらいいのかわからないという方も多いです。
実際に家が完成すると、建物の内部に隠れてしまうものですが、住まいの快適さに直結するため、こだわって検討したいですね。
今回は、断熱材の役割から、基本的な種類と性能、メリット・デメリット、選び方のポイントなどについてお伝えします。
暮らしやすさに直結!断熱材の大切な役割
断熱材の役割は、家の外から室内に入り込もうとする暑さや寒さ、騒音などの不快要素を軽減し、室内の温度を一定に保つことです。
断熱材がない家は、外の気温の影響をそのまま受けるため、夏は暑く、冬は寒いです。
エアコンを稼働させても室温が保たれないため、冷暖房費が高額になり、快適な環境を作るために、かなりの苦労と費用が必要になります。
断熱材が住まいに十分に充填され、断熱性能が高い家は、空調効率がいいため、冬温かく、夏涼しい快適な環境をつくりやすくなります。
また、極端な温度差がなくなるため、ヒートショック(温度差で血圧が急変動して起こる、心臓や血管の疾患。最悪の場合死に至る)などの危険性も低くなります。
安全で快適な住まいづくりのために、断熱材は欠かせないものです。
8つの断熱材 種類と特徴
断熱材には、大きく繊維系と発泡プラスチック系があります。
繊維系断熱材とは、絡み合った繊維の間に空気を閉じ込めて断熱効果を得るものです。
発泡プラスチック系断熱材とは、プラスチックの中に泡(空気)を閉じ込めて断熱効果を得るものです。
繊維系と発泡プラスチック系、住宅で使われる断熱材の種類と特徴をお伝えします。
■ 繊維系断熱材の種類と特徴
※熱伝導率は値が、低いほど熱を伝えにくい(断熱性に優れる)
名称 | 熱伝導率【W/(m・K)】 | 特徴 | メリット | デメリット |
グラスウール | 10K…0.050
16K…0.045 24K…0.038 32K…0.036
|
・ガラスを繊維状にし、綿のように集め、成型したもの
・敷き詰めるように施工する(機械で吹付けるタイプもあり)
・木造住宅に広く普及している |
・加工しやすい
・軽い ・安い ・火災に強い ・虫害に強い |
・見た目は綿のようにふわふわしているが、触れるとチクチクする(チクチクを軽減した商品もあり)
・湿気に弱い ・施工技術によって期待する断熱性が得られないことがある ・化学物質が使われている
|
ロックウール | 0.038 | ・岩を繊維状→綿状にしたもの
・アスベストの代替品として登場 |
・加工やすい
・ひときわ火災に強い ・虫害に強い ・安い ・軽い |
・湿気に弱い
・施工技術によって期待する断熱性が得られないことがある ・化学物質が使われている
|
セルロースファイバー | 0.040 | ・新聞紙や木質を原料とし、繊維質にしたもの
・機械で吹付けるようにして施工 |
・施工精度が高い
・サスティナブルな素材 ・化学物資宇を使わないため体に優しい ・防音効果、調湿効果、防虫効果がある |
・高価
・工期が長くなる ・重い ・施工が難しい |
インシュレーションボード | 0.052 | ・廃木材をチップ状に加工し、成型したもの | ・施工性が良い
・木材の良さが活きる(調湿性・消臭効果) |
・虫害に弱い
・断熱効果は低め |
■ 発泡プラスチック系断熱材の種類と特徴
名称・熱伝導率 | 熱伝導率【W/(m・K)】 | 特徴 | メリット | デメリット |
硬質ウレタンフォーム | 0.029 | ・ポリオールとポリイソシアヌレートを原料にしたもの
・ボード状のものを敷き詰めて施工する
|
・水に強い
・耐久性に優れる
|
・比較的高価
・火災で有毒ガスが発生する ・化学物質を使用している |
現場発泡式ウレタンフォーム | 0.029 | 特殊な機械で現場発泡し吹き付ける様にして施工する | ・施工精度が高い
・水に強い ・耐久性に優れる |
・比較的高価
・火災で有毒ガスが発生 ・化学物質を使用している |
フェノールフォーム | 0.020 | ・フェノール樹脂を発泡させ板状に成型したもの
・専用のビスで留めて敷き詰める |
・施工しやすい
・火災に強い ・耐久性に優れる |
・高い
・紫外線に弱い ・衝撃に弱い |
ビーズ状ポリスチレンフォーム | 0.041 | ・ビーズ状のポリスチレンを発泡させ、成型したもの
・いわゆる発泡スチロール |
・施工性が良い
・安い ・水に強い ・耐久性に優れる ・軽い |
・熱に弱い
・化学物質を使用している ・衝撃に弱い ・紫外線に弱い |
隙間なく断熱が出来る吹付発砲ウレタンフォーム
断熱材の選び方4つのポイント
断熱材は、住まいの外周部を包むように施工されます。
断熱材の種類によって、住まいの建築コスト、火災の際の危険度、空調効率などの暮らしやすさが大きく左右されます。
どのような断熱材を選ぶべきか、判断するためのポイントを解説します。
1.重視するポイントは何か?
断熱材の種類と特徴でお伝えしたように、断熱材にはいろいろな種類があり、それぞれ一長一短の特徴があります。
住まいづくりにおいて、何を重視するかを検討し、断熱材を選びましょう。
例えば、以下のように考えることができます。
・断熱性がいいものにしたい!…熱伝導率が低いフェノールフォームをメインに使う
・コスト重視!…グラスウールをメインに使う
・環境や健康に配慮したい!…セルロースファイバーをメインに使う
メインに使うという書き方をしたのは、住まい全体に一種類の断熱材を使うこともありますが、部位によって断熱材を使い分けることもあるためです。
2.火災のリスクを検討する
発泡プラスチック系断熱材は、断熱性に優れた特徴がありますが、熱に弱く、燃えると有毒ガスが発生する危険性があります。
最近の住宅は、火災の発生リスクが少ないですが、近隣火災などの熱も、建物に影響が及びます。
強い熱が加わることで、断熱材が委縮し、断熱効果が得られなくなることもありますので、発泡プラスチック系の中でも熱に強いフェノールフォームを使うことや、外壁ではなく床に使用を留めるなど、使用方法を検討しましょう。
3.空調に対応させる
断熱効果が高い住まいは、空調効率がよくなりますので、少ない稼働で住まいの環境を快適にすることができ、また、その効果を長く保つことができます。
全館空調を希望する場合、ランニングコストが高くなってしまうため、断熱性能を高くする必要があります。
断熱効果の低い住まいの場合、ルームエアコンで空調をした方が空調費は抑えられるためです。
4.開口部にも気をつけよう
いくら断熱材に気を遣っていても、窓や玄関扉などの開口部の断熱性能が疎かだと、そこから住まいの断熱性能が損なわれてしまいます。
熱伝導率の低い木製サッシを使うことや、アルミサッシでも、内部に断熱材が充填されている商品を選びましょう。
ガラス部分は、ペアガラス(2枚のガラスの間に空気層があるもの)や、トリプルガラス(3枚のガラスの間に空気層があるもの)を選ぶなどして、断熱性に気を遣いましょう。
玄関扉においても、断熱性の高い商品を選ぶことが大切です。
住宅に使われる断熱材の役割と種類、選び方のポイントについてお伝えしました。
新築住宅の断熱材は、多くの場合、建設会社が勧めてくるものを使うことになります。
その際も、最低限断熱材の性能や、特徴を理解しておくと、家づくりの不安が少なくなります。
適材適所で使い分けし、こだわりたい部分や、コストに合ったものが選べるといいですね。
◆ 執筆者プロフィール ◆

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。
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