◆家づくりのコラム:屋根について
住まいにとっての屋根は、雨風か我々を守ってくれるとても重要な部分であるのは誰もがご存知のことだと思います。
屋根は、材質や形状によって住宅の快適さやデザインを大きく左右する部分でもありますね。
そんな重要な存在である屋根ですが、材質や形状の選択は意外と消極的に行われていて、成り行き任せになってしまうこともあります。
間取りが決まった後に間取りの形状に沿って決めてしまったり、斜線制限に伴って形状が決まってしまうこともしばしば。
施主の立場の場合は、屋根の形状は業者に任せきりということも多いかもしれません。
今回は、屋根の基本的種類と、材質について解説します。
それぞれの特徴を理解した上で、住宅に適した屋根を形にしていきたいですね。
基本的な屋根形状
まずは、住宅に使われる屋根の基本的な形状から確認してみましょう。
・切妻屋根
屋根の最頂部分から2面、下方の梁むけて野地を張った形状の屋根のことを言います。
棟は、最頂部のみに配置されます。
構造がとてもシンプルなために丈夫で雨漏りがしにくく、コストも比較的安価です。
・寄棟屋根
屋根の最頂部分から4面に屋根を分けた形状の屋根のことを言います。
最頂部の「大棟」から「下り棟」という4つの棟が下っていく形で構成されています。
最頂部分に大棟を配置せず、4つの下り棟を合わせた形状の「方形」という形状もあります。
屋根に存在感があり、住宅そのものに重厚感を与えます。
構造が少々複雑で、切妻屋根に比べて板金の加工や使用する部材も多くなるため、比較的コストが掛かります。
大棟のない方形屋根
・入母屋屋根
最頂部分が切妻屋根で、その下から寄棟屋根の形状をした屋根です。
日本的な住宅でよく用いられる屋根の形状です。
瓦葺きと組み合わせると、純和風の高級感ある住宅になりますが、棟が多く、構造がとても複雑なため、雨漏りに充分注意して施工する必要があり、一定の技術力が必要になります。
・片流れ屋根
最頂部から、1方向に流れる屋根のことを言います。
1枚屋根のとてもシンプルな構造のため、比較的コストが掛からず、メンテナンスしやすい屋根と言えます。
ただし、1方向に雨が集中して流れるので、集中豪雨の際には滝のように雨が流れる恐れがあります。近隣への配慮や雨樋の詰まりには充分注意が必要です。
金属屋根と組み合わせると、屋根がすっきりした印象になり、現代的でスタイリッシュな外観になります。
・陸屋根
「ろくやね」と言い、水平な屋根の事を言います。
屋根を屋上として活用できることが最大のメリットと言えます。
屋根自体が風による被害を受けにくくなりますが、雨水や雪が流れにくいため、防水に細心の注意を払って施工をする必要があります。
屋根の素材
屋根の仕上げ材に用いられる、基本的な屋根材をご紹介します。
・スレート
価格が最も安価でバリエーションが豊富なことから、最も普及している屋根材です。
有名メーカーの商品名からコロニアル・カラーベストとも呼ばれています。
瓦よりも軽量なため、耐震性を考慮したリフォームにもよく用いられます。
商品自体の耐久性は20年程度で、とても割れやすいのが特徴です。
新築から10年目以降は塗装や割れのチェック等の定期的なメンテナンスを必ず行う必要があります。
・日本瓦
古くから伝わる伝統的な屋根材で、比較的割れに強く、耐久性があり、瓦自体にメンテナンスが必要ないというメリットがあります。
ただし、瓦自体がとても重いので耐震性には不向きと言えます。
最近ではその点を考慮した軽量瓦も登場しています。
瓦自体の価格や、施工に手間が掛かるために高価な屋根になりますが、重厚感で右に出る屋根材はありません。
・セメント瓦
セメントでできた、日本瓦に似せた屋根材です。
スレートに次いで割れやすいですが、耐久性に優れ、色柄が選べるため洋風なデザインにも対応できます。
新築後15年程度で塗装のメンテナンスが必要になり、日本瓦よりも安価ではありますが、比較的高価ではあります。
重量があるため、耐震性には不向きです。
・ガルバリウム鋼板
アルミニウム55%、亜鉛43.4%、シリコン1.6%から成るアルミ亜鉛合金めっき鋼板のことを言います。
アルミニウムの耐久性、耐食性、耐熱性、熱反射性と、亜鉛の犠牲防食機能を組み合わせたことで、従来の鋼板より優れた耐久性を持っています。
素材自体が軽量なため、耐震性にも優れます。
デザイン住宅によく見られるスッキリした外観のガルバリウム鋼板
金属屋根なので、割れの心配はありませんが、塩害や鳥の糞や傷によって錆びてしまい、そこから腐食が進むことがありますので、定期的にチェックをする必要があります。
緩い屋根勾配でも使用ができるため、室内空間を広く確保でき、外観も現代風なすっきりとしたデザインにすることができ、近年人気を集めています。
・銅板
銅の板のことで、その耐久性の高さから神社や公共建築物等の重要な建築物にも用いられます。
伸縮性、加工性に優れ、大気中に保護膜を形成する性質を持つため、徐々に色の変化が起きるのも特徴です。
軽量で耐震性に優れ、高い耐久性を誇りますが、とても高価なため、重厚感のある屋根形状と組み合わせて高級感溢れる外観にしたいですね。
ガルバリウム鋼板や、銅板、現在の新築ではあまり使われなくなりましたがトタン等の金属属屋根は、遮音性が低く、雨音や屋根の上を歩く鳥の足音が室内にダイレクトに伝わるという特徴があります。
そのため、屋根材の裏側に断熱材と防音材を張り合わせ、音の対策も忘れずに行いたいですね。
住宅に用いられる基本的な屋根の形状と、屋根材についてお伝えしました。
それぞれの特徴を理解した上で、屋根の形状や屋根材の長所を最大に活かせるような設計ができるといいですね。
◆ 執筆者プロフィール ◆

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。
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