◆家づくりのコラム:階段について
2階建て以上の住宅の場合、1階と2階を繋ぐ階段が必要になります。
階段は上下階の移動手段として使われますが、その位置や形状によって住宅の暮らしやすさを左右するとても大切な存在です。
また、リビングや住宅の目立つ位置に配置することで、空間の雰囲気を素敵に演出してくれますよね。
今回は、住まいの暮らしやすさや空間のデザインに大きく影響する階段についてお伝えします。
階段の位置を考える
階段を設置する位置は、一般的に大きく分けて2つの選択肢があります。
・ホールや廊下の延長線上に設ける
・リビングや個室に設ける
この2パターンを選択した上で、空間の目立つ位置に配置するのか、来客の目に触れない位置に配置するのかも住まい手の要望やプランの利便性によって変わってきます。
リビングに設置する場合は、必然的に階段の部分を吹き抜けにする必要が出てきますのでその際に気になる問題に充分配慮して計画したいですね。
例えば、以下のことが挙げられます。
・吹き抜けになることで、エアコンの効率が悪くなる空調の問題
・リビングの音が他の階に筒抜けになる音の問題
・LDKに仕切りの無い場合は、料理の臭いが吹き抜けを通じて個室に届く臭いの問題
家族間のことなので、音や臭いの問題は全く気にならないというご家庭も多いですが、プランの段階でこういった部分を理解しておく必要はありますね。
安全性に配慮する
日本では、家庭内での事故で亡くなる方が交通事故で亡くなる方より多いという統計が出ている事はご存知でしょうか。
家庭内の事故原因のひとつに、階段からの転落が挙げられます。
家庭内で悲しい事故を起さないためにも、階段には以下のような充分安全性に気を使った計画をしたいですね。
・踏み面・蹴上げの寸法に配慮し、踏み外しにくく緩やかな階段にする
→お年寄りが暮らす場合は、ノンスリップも効果的です
・部屋の出入り口のすぐ側に階段を設けない
→出来れば出入り口から階段の降り口まで、3尺は距離を取りたいですね
お子さんのいる家庭の場合はベビーゲートを設置するスペースにもなります
・握りやすい手すりを設ける
→手すりの設置は建築基準法で定められていますが、デザイン性ばかりでなく握りやすい太さや高さにも考慮したいものです
・形状にも配慮する
→次の節で詳しく解説しますが、かね折れ階段や折り返し階段のような上から下まで一直線に落下しないような形状にするとより安全です。直階段の場合は、出来るだけ踊り場を設けたいですね
階段の形状
階段の形状は、プランの利便性によって限られてしまうことがほとんどです。
その上で、それぞれの階段の形状の特徴を理解し、安全性やデザインに考慮してその家に適した階段の形状を選択したいですね。
・直階段
まっすぐの階段のことです。形状のシンプルさから低コストでコンパクトな計画ができます。
ストレートに上る階段の方がスタイリッシュなデザインになりますが、安全性を考慮する際にはなるべく途中に踊り場を設けたいですね。
・かね折れ階段
L字型の階段のことです。
折れ曲がる部分が必要になるため、直階段よりコストは掛かります。
L字型に折れることで、上から下まで物が一直線に落ちることはなく、直階段よりも安全性に優れています。
・折り返し階段
折り返し階段は、U字に折り返す形状の階段です。
限られたスペースの中で階段の段数を増やすことができ、階段の勾配をより緩やかにできますが、かね折れ階段よりもコストは掛かります。
家具や家電を階段で運ぶ場合、折り返し部分で詰まることが多々ありますので、出来れば有効幅を800mm以上は確保したいですね。
・螺旋階段
らせん状に渦を巻いた形状の階段のことです。
省スペースで、デザイン性に優れることから近年は人気が高まっています。
使用に慣れていない場合は、上り下りを大変に感じることもあります。
手すりの高さや位置に考慮して、上り下りのサポートになるようにしたいですね。
また、大きな物の運搬がほぼ不可能ということもデメリットとして挙げられます。
大きな家具や家電は窓から出し入れできるように計画しましょう。
階段の形状だけに注目すると、一番コストがかかる形状でもあります。
階段のデザイン
・側桁階段
階段の両側に斜めに通った「桁」が、段板を挟みこむように受ける構造の階段です。これを側桁といい、この階段を「側桁階段」といいます。側桁階段は今の木造住宅において殆どがこの形式を採っています。
・ささら桁階段
階段の段板を受ける「桁」が、段板の下にあり、階段に沿って段々になっているもののことを言います。
両側に部材が通らないため、側桁階段よりもスッキリとしたデザインになります。
ただし、施工には技術力が必要になります。
階段の部材同士をぴったり納まるように加工する技術や、階段の段に合わせてクロスを貼る手間が必要になりますので、側桁階段よりもコストがかかります。
・ストリップ階段(スケルトン階段)
蹴込み板を設置せず、段板のみが宙に浮いたように見える階段です。
階段の裏側から、一本の「桁」で段板を支える構造の「力桁階段」もこのストリップ階段に分類されることが多いです。
準防火地域の木造3階建てで、木製の階段の場合、段板の厚みに規制が出ることもあります。
厚い部材を使うと、スッキリしたデザインがメリットのストリップ階段ではありますが、重たいイメージになってしまいます。
その場合は、鉄骨で階段の構造体を造ることで、準防火地域内の木造3階建て住宅のストリップ階段でもスッキリとしたデザインを保つことができますよ。
鉄骨階段なら地域に関係なくデザインにも拘れるのが魅力です♪
・箱階段
階段の側面に引き出等を設けた階段のことです。
江戸時代に登場したとされます。
収納スペースを兼ね、デザインも面白いため、省スペースの住宅で人気の階段形式です。
階段は毎日必ず使うものですが、通路として扱ってしまい、こだわらないこともありますよね。階段の存在は住まいの暮らしやすさに直結すると言っても過言ではありません。
毎日使うからこそ、設置する位置や形状、安全性、デザインに充分配慮して階段の計画したいですね。
◆ 執筆者プロフィール ◆

ー 佐藤結伽 ー
2級建築士。
2人娘の育児にも奮闘中。
最近、自邸の建設をし
注文住宅を購入する事の素晴らしさと、大変さを身をもって経験した。